<2010. 7. 29-30 ウミガメの産卵 in 屋久島>

last update 30.July.2010





 7月29日(木)〜 30日(金)

 29日(木)は雨。風もやや強い。
 午後、二時間ほど晴れたので子供たちは永田小学校の校庭でボールを
蹴って遊んでいた。大きな声をあげて盛り上がる子供たち。

*

 新しい iMac をお借りしてメールなど。

*

 夕飯づくりを手伝う。

 今晩は・・

 ゴーヤのごまあえ
 なすときゅうりとシーチキンのマヨあえ
 もずくのレモン汁あえ
 ごはん
 三岳(イモ焼酎)

 18:20 謙一郎さんが郵便局から帰ってきた。
 雨の中、しかも慣れない一区の配達、ごくろうさま。

*

 ここ永田は、明治ごろまで、林業(杉)、漁業(かつお、その後、と
びうお)、農業(野菜、米、果樹:ぽんかん、たんかん)などが盛んだ
ったが、現在はぽんかんなどが残っているものの基幹産業と言えるもの
はなくなってしまった。

*

 屋久島は観光産業が重要だが、多くの旅行者は縄文杉を見るための登
山が目的。しかし、登山ルートにトイレを増設することは難しく、人間
のし尿の問題が大きくなっている。一部はヘリで運搬しているがとても
間に合わない。(ゴールデンウィークは一日1000人の登山者で賑わ
う)

 また登山道にある杉の木の根も踏まれることでのいたみが激しい。

 登山自体にはおカネはかからないので、し尿処理の予算もなかなかと
れない。現在検討されているのは入島税だが、島内の議員のほとんどは
保守議員であるため、なかなか前に進んでいないようだ。

*

 30日(金)

 今日も、ライチ、パッションフルーツ。おいしい!

 朝、七里さんが借りているもう一軒の家を見に行く。

 歩いて10分、なかなか素敵なロケーションだ。
 砂浜まで歩いて3分。

 素泊まりの宿をやったらいいと思う。
 七里さんもそう考えていた。

 懸案事項は、ご近所の理解。
 夜の話し声は控えなければならない。

 そこで21:00就寝のルールをつくった。(^^

 あとは内装を簡素ながらセンスよくまとめて
 blog で発信すればよろしい。
 英語と日本語で。
 七里さんはロンドン在住だったので英語は堪能。
 奥様も英語堪能。

「素泊まりの宿」永田 in 屋久島!
 とっても楽しみ。

*

 みんなでうどんを食べたあと、七里さんは庭で木を焼く。
 玄関の横に鬱蒼と茂っていたセンダンを先日切ったもの。
 シロアリの巣になっていた木もあり、ていねいに焼いた。

*

 午後、近くの四ッ瀬(よつせ)までクルマで釣りをしに。

 道路わきにクルマを止め、沢を下っていくと・・

 目の前に、すばらしい砂浜と海が広がった!
 岩場も適度にあり、磯に住む生き物も見られる。

 七里さんがカメノテという貝をエサ用につかまえてくれた。これは人
間も食べられる貝。貝殻をこわし、中身を切り刻んで釣りエサにする。

 七里さんは祐也にも様々な釣りのアドバイスをしてくれた。太音くん
にも投げ方を教えている。

 ボクはしばらく見ていたが、一度岩場から砂浜に降りた。すると小ガ
ニを発見。パッとつかまえた。カニをつかまえる、なんて何十年ぶりだ。

 しかし、海がきれい。海水が透き通っている。遠くの水平線と雲と空
を見る。振り返れば屋久島の高い山々が延々と連なっている。360度
の絶景。砂浜へ遊びにきているグループも他に二組ほどでまるでプライ
ベート・ビーチ。小さな川が海へ注ぎ込んでいる。その水も透き通って
いて、曲線の外側で川の水が渦をつくり、そこに太陽光がキラキラと反
射して美しい。

 夕方17:00過ぎまでねばって、魚は残念ながら釣れなかったが、
太音くんが小さな海老をつかまえた。祐也も釣りに行けたことに満足し
ている様子。

 帰りに柴とうふ店に立ち寄って、前日に予約してあったとうふを二丁
買った。永田の湧き水を使った手づくり豆腐だ。

 本日の夕食は・・

 きゅうりとわかめの酢づけ
 かぼちゃときゅうりの細切りサラダ
 ししとう
 ゴーヤ炒め
 おとうふ
 琵琶ます(淡水魚)
 ごはん

 おいしかった〜 ごちそうさま。

*

 今夜はウミガメの産卵を見にいく日。

 ウミガメの産卵のガイドをしている七里さんは、ひと足さきに、20
:00〜前浜に出ている。

 21:30頃、七里さんから電話があった。
「ウミガメが浜に上がってきたよ」

 そこで太音くん、祐也、おさむの三人で徒歩で前浜へ向かう。
 道際に電球が並んでいたので、そちらの方へ歩く。
 浜へ降り立ったが、どこにウミガメがいるのかわからない。
 最初、右方向へ歩いたが・・いない。
 Uターンして5分後、弱い懐中電灯の明かりを発見。
 観光客に取り囲まれたウミガメがちょうど産卵を終え、砂をかけてい
るところだった。

 バサッ、バサッ、バサッ、とすごい迫力。

「はい、ではこれで産卵は終了です。みなさんお氣をつけてお帰りくだ
さい」とのガイドさんの声で観光客はぞろぞろ退散していく。

 七里さんがボクらに「ウミガメが海に還るまで見ていたらいいよ」と
小声で言ってくれた。

 何歳くらいから産めるの?、とボク。

 少なくとも30歳から、と七里さん。

 30歳からの出産・・けっこうおどろくボク。

 海へゆっくりゆっくり還っていくウミガメ。

*

 すると、あらたに一頭のウミガメが海から上がってきた!

 感動的な場面である。

 もう観光客もいない。

 真っ暗闇ではあっても、いまからじっくり静かに産卵の一部始終を見
ることができると思うと心がおどる。

 アカウミガメには一頭一頭に番号が付いている。
 NPOの方が番号を確認し、前浜のどのあたりに上がってきたかをト
ランシーバで忙しく交信する。

 ウミガメは良さそうな場所を見つけ、砂をかきわけ穴を掘っていく。
 ものの五分くらいですっぽりウミガメが自分の掘った穴に納まった。

 産卵が始まる前に卵が落ちる場所をNPOの方がさらに掘っている。
(なにをするのかな、と思って見ていた)

 産卵が始まる。
 想像していたよりも早いペース。

 産んだそばからNPOの方がどんどん卵を2〜3個ずつ穴から出して
いく。
 素早い、手慣れた、無駄のない動き。
 しかも放り投げている。

 ここでとなりに座っていた屋久島ウミガメ館 館長 大牟田さんの流
れるような解説が始まった。

 見てごらん。ここは海から近いでしょ。台風がきた場合、卵は全滅し
ちゃう。だからすべて保護して、近くの安全な砂浜に埋めるんだ。

 この卵をさわってごらん。ポコッとへこむでしょ。だから投げても割
れないんだ。にわとりの卵だったら割れるよね。でも孵化時にはカチカ
チになっているよ。

 産みたての卵を触ると、まだヌルッとしていた。

 産卵時にヒトの手がウミガメのからだに触れたらどうなりますか、
とボク。

 そんなときはおどろいて産卵がとまることもある。
(もちろん触れないように細心の注意をはらっている)
 子供の頃、立ち小便しようとしたら、後ろからワッとおどかされたこ
とはない?小便の出始めだったら自分の意思で止められるよね。けどあ
る程度出ていたら止められない、それとおんなじだよ。(笑)

*

 こういったヒトの話し声はウミガメには聞こえないのですか、とボク。

 いわゆる耳が閉じているんだ。だからほとんどヒトの声は聞こえない。
耳元で大声でワッとすれば聞こえるかもしれない。代わりに波の音や海
の音はよく聞こえている。聞こえる周波数がヒトとは違うんだ。

*

 日本政府はウミガメ保護など自然環境保護活動にあまり関心がないか
ら、我々の活動はなかなか認められないし、おカネももらえない。

 ところが遠くアメリカからは認められているんだ。
 まとまった金額の補助を毎年受けている。
 アメリカはすごい国だよ。
 世界のどこにどんな自然が残っているかを把握しているんだから。

 一頭のウミガメがひと夏に何回も産卵のために浜へ上がってくること
もわかった。ひと夏に4回〜7回(最大)も、だ。一回あたり約100
個の卵を産む。これは一頭一頭に番号を付けて管理しているからわかっ
たことだ。一頭が何度も産卵にきているということは、思っていたより
もはるかにウミガメの頭数は少ない、ということだ。こういったデータ
がなければ保護策もつくれないし、環境省に対してもなにも言えないか
らこういった地道な努力が大事なんだ。

 数年前、アメリカ人が視察にきて、この浜はすばらしい、と何度も言
ってくれた。堤防もダイナマイトで壊せ、と何度も言っていた。またな
により我々の地道な努力によるデータの信頼性が高いことを褒めてくれ
た。26年前から集計し始めた頭数のデータをアメリカが買ってくれた
ようなものだ。(オーストラリアでもウミガメの頭数のデータをとって
いるが信頼性がやや低いそう)

 26年の間に何度も危機があった。こんな砂浜はいらない。港にしよ
う、プラントを建設しよう、とあらゆる開発の話がきた。人間の99.
9%は環境保護なんて考えてないからね。開発して利潤を生むことしか
考えていない。そんな危機がくるたびにウミガメの頭数のデータを元に
裁判をおこした。弁護士の友達も多かったからね。環境省を訴えること
を考えた時期もあった。

 環境省の官僚の年収を仮に1000万円くらいとする。でもここ屋久
島では300万円あれば十分暮らしていける。だからあなたがた一人の
年収でここでは三人のNPO職員を雇うことができるという話をしたこ
ともある。

 とにもかくにもウミガメがこの砂浜を守ったんだ。

 いまではこうして観光客も毎年多く訪れてくれるようになった。
 本氣で環境保護をすることで観光産業が成り立つモデルケースとなっ
た。

 いまの大人は相変わらず開発や環境破壊をしているけれど、本当にい
まの大人がするべきことは、少しでも多くの自然環境を子孫へ残してい
くことですね、とボク。

 本当にそうだねぇ。昔は200個の卵を産んだという記録も残ってい
るから、いまよりも大きなウミガメだったんだねぇ。

* * * * *

 7月29日(木)の写真はございません。
 7月30日(金)は、四ッ瀬(海)の写真が最初にきて、次に準備中
の宿の写真が続きます。なお、ウミガメ産卵の写真はございません。

 ふじかわ おさむ at 永田 in 屋久島



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