<mp3, mp4>





  2013. 7. 8

 "mp3, mp4"

 音響機器(ステレオ・セット)オタクが好きだ。

 ボクはまだまだその領域に達していないけど、ひとつだけ
書き残しておきたいことがあるので、キーボードをたたき始
めた。

 ボクの感覚では1980年代が、人類最高の「音質」だっ
たような氣がする。1980年代のステレオ(音響機器)が
最高だったと思う。いや、もちろん現代の音響機器がその頃
よりも劣っているわけではない。ただ技術的には1980年
代からはほとんど進歩していないと思われる。

 ところで、今日は「音響機器」(ハードウェア)の話では
ない。「音」(ソフトウェアおよびメディア)の話。

 いまの若者は知らないのかもしれない。1980年代まで
世界中で親しまれてきたレコード。これは 30cm くらいのプ
ラスティックの黒い円盤で、なんと驚くべきことにその円盤
には溝が彫ってある。しかも!ステレオなのだ。

 ステレオの意味はご存知だろうか。ステレオとは、人間に
は耳が二つあるということに着目し、左右のスピーカー(左
右のヘッドフォン)から、わずかに違う音を再生することに
よって、まるで、ジャズ・ライブの会場にいるかのような臨
場感を出す技術のこと。ドラムが真ん中にいて、ベースが右、
ピアニストが左にいるなぁ、とわかる、そんなCDを聴いた
ことはみなさんあると思う。(ステレオの反対語はモノラル。
モノラル録音はいくら両耳で聴いても左右の音が同じなので、
脳の中央で音楽が鳴るだけなので臨場感に欠ける)

 レコードの話に戻ろう。レコードの録音はアナログ。CD
の録音はデジタル(0、1の世界)なのだから、当然、音の
良さはレコードの勝ち。ただし、レコードに静電気によって
吸いつけられるほこりには苦労した。再生時、レコード針が
ほこりを拾ってしまうので「バッ、バッ」と断続的にほこり
の音が聞こえることもよくある。しかし、ほこりがほとんど
ない、ていねいに保管されたレコードの音を聴くとき、誰も
が感動したはずだ。すばらしい音なのだ。

 なぜCDよりもレコードの方が音が良いのか。CDが発売
された頃、多くの音響機器ファンがCDの音をきらった。「
音が軽い。シャカシャカしている」など。CDの裏面は冷た
く、虹色に光るので、それも拒絶反応の理由のひとつだった
のかもしれない(笑)

 音楽家であり宇宙論の物理学者でもある恩師、佐治晴夫先
生に1990年代に一度、質問したことがある。「先生、な
ぜレコードの方がCDよりも音が良いんですか?」すると先
生が答えてくれた。「雑音があるからだろうね」ボクはびっ
くりした。あのレコード盤に無数にくっついているほこりが
何よりもきらいだったから。続けてよくよく話を聴いてみる
と、もちろん多すぎるほこりはマイナス。うるさいだけ(笑
)そうではなく、レコードをレコード針で再生する際にどう
してもわずかに出てくる「雑音」このほとんど聞こえない雑
音が「功を奏している」(まさに!)のではないかという理
論だった。人間は無音の中で鳥のさえずりを聞いているわけ
ではない。雑音の中で聞いている。だから美しい。さすが理
論物理学者である。

 いま思い出してもレコードの音は温かみがあった。なぜか
はわからない。普段、プラスティック製品をきらっているく
せに(笑)レコード盤だけはいつまでも大切に保存していた。
しかし、世界は動く(笑)1980年代に、レコードはどん
どん淘汰され、完全にCDの世の中に変わった。(その後、
現代ではレコードが少数のファン向けに復活。レコード・プ
レイヤーも販売されている)

 ご存知のようにCDは音がいい。いや、本当にご存知だろ
うか?ボクは1980年代に秋葉原の電気街にある高級音響
機器の試聴ルームで一度吹っ飛んだことがある。まるでジャ
ズ・ライブハウスにいるかのような感覚が、その楽器たちの
音が、からだをつきぬけた。大音量ではなかった。心地よい
音量だったが、その音質に驚いた。圧倒的なアンプとスピー
カーの性能の良さ。メディアはCDだった。(昔、プリアン
プとメインアンプは別だった。いまでもそうゆーセットを組
んでおられる音響ファンもいるでしょう)

 CDはデジタル録音なのでゼロとイチの世界。それなのに
なぜあんなにいい音なのか?それは人間の耳と脳を研究した
(というかいろんな音楽で試した)結果、ここまで、ゼロと
イチの信号を細かくすれば、人間にはわからない、というこ
とにあいなったのだった。だからまるでサックスのように、
まるでピアノのように、まるで「声」のように聴こえる。

 さて、MACを生み出し、iTunes を生み出したアップル
社のことをそろそろ書かなければならない。しかし、その前
に mp3 のことを書こう。

 時は流れ、1995年あたりからインターネットを始める
人間が増えてきた。Windows3.1 とは違って、簡単な設定を
するだけで誰でもモデムでインターネットできるWindows95
が出てきたのもこの年だ。この頃からPCで音楽を聴きたい
という人間が増え、さらに自分の好きな音楽を、自分の友人
にも聞かせたいと思う人間が増えた。

 しかーし!CDのデータは重かった。なんせ 700MB もあ
る。なので音楽CDを CD-R にコピーして友人にプレゼント
する連中が増えるのと同時に、音楽CDの WAVファイルを約
十分の一の mp3 に変換してネットで時間をかけて送信する
か、もしくはメディアで手渡しする連中も増えた。

 ここまではどうせ遊びだ、と思っていた。いろんなヒトが
いろんな思惑でいろんなことを始めるのは仕方がないことだ。

 ところがアップル社が動き始めた。まずは mp3 を売り始
め、数年後、やや音質を改善した mp4 を売り始めた。人間
の耳には聞き取りにくい音域を巧みに削除したのが mp4.(
だが、ボクの耳には聴き分けができる)有料でCDよりも音
質のわるい音楽をネットで販売するアップル。こんなものた
いして売れないだろう、と思っていたら、数年後、爆発的に
売れ始め、世界中の若者たちがネットで音楽を買うライフス
タイルを選んだ。

 アップル社はなぜ mp4 の開発に真剣に取り組んだのか。
その理由は二つあるとにらんでいる。ひとつめはネットの速
度。二つめは2000年〜2005年頃まで、大型フラッシ
ュメモリはまだ世の中になく、アップル社の iPod も小型H
Dに頼るしかなかったという事情がある。(音楽CDを50
0枚分、持ち歩けるようにと考えていたようだ)ひとつめの
ネットの速度に戻ろう。日本国内に電話回線に高周波を通す
!というADSLが普及し始めたのが2000年後半からだ
った。そのわずか数年後から光ファイバが普及し始め200
5年頃には光ファイバも日本全国の都市部にかなり普及した。
ここではADSLと光ファイバは等しく恵まれた人間だけが
使える高速回線としておく。

 アップル社(スティーブ・ジョブス社長)がどんなふうに
考え、どんな戦略を練っていたかを引き続き推測してみよう。
アップルは iTunes をできるだけ多くの人間に(Windowsユ
ーザも含めて!)利用してもらいたかった。世界中には遅い
ネット環境の人間もまだまだ存在しているし、光ファイバな
ど速いネット環境のヒトにも、CD一枚分をわずか一分弱で
ダウンロードできるようにしたかったのだ。なんと言っても
商売のためにはスピード(サクサク感!)が大事。商売のた
めには音質は少しわるくてもいいのだ、というわけだ。(音
楽好きのマーケットに売り出すのに音質を劣化させるなんて、
ふつうの人間にできる発想ではない)

 mp3 は音がわるいというのはネット上で(笑)定説になっ
ていたからアップルはどうしても「あまり音質が落ちていな
い、けどファイルサイズは小さいままの」mp4 の開発を急い
だ。そして、ついに mp4 を市場に出した。mp3 でもそれほ
ど不満をもっていなかった若者たちも多かった(わるい音質
に慣らされていた)こと、それに加え、mp3 に不満を持って
いた人間たちからも mp4 に対する不満はごくごく一部で済
んだことから、アップル社幹部たちもほっと胸をなでおろし
たことだろう。

 ネット経由で音楽は売れ続け、iPod も売れた。しかしア
ップルは、iPod の売れ行きに満足するような会社ではない。
どんどん手を打ってくる。世界でいま、なにが売れるのか?
マーケティングはピカイチだ。そして、2007年頃からタ
ッチパネル技術の感度(精度)の良さに着目する。そして、
iPad を商品化し、成功させた。次は、ご存知、世界中で大
ヒットした iPhone. しかし現在は、韓国のサムソン、台湾
のHTCなど強力なアンドロイドOS勢に世界シェアでは負
けている、という段階にある。

 いや、ボクはアップルの話をしたかったのではない。mp4
の音質のことを話したかったんだ。

 2009年頃、アップルは mp4 が自由にコピーできるの
はけしからん、と思うようになった。そこで、コピー制限を
かけることにした。自分のPCから自分の iPod へのコピー
ならば5回まではよろしい、それ以上は不可という具合に。
音質の劣化した音楽を有料で販売し、コピー制限までかけて
くるのだからたいしたもんだ(笑)

 また、当時の iPod を見て驚いたのは、CD音質そのまま
でファイルサイズを1/2にしてくれるありがたい flac を
再生できないのだ!flac format を開発したグループはフリ
ーでこれを公開している。MAC, Windows どちらでも再生可
能だが、iPod では再生できなかった。これはケチだなと思
った。

 話を mp4 のコピー制限まで戻そう。要するにもはや mp4 
はコピーできないことがわかった人間たちはどうしたか? 
なんと、多くの人間が mp3 に戻ってしまったのだ!mp3 な
らばいまだにコピーフリー。しかもどんな携帯端末、どんな
PCでも再生できるので超便利。しかも mp3 はファイルサ
イズが小さいのでなにかと便利。

 この「多くの人間が mp3 に戻ってしまった」という事実
がボクにとっては「残念」なのだ。良いアンプとスピーカー
で聴いてほしい。もしくは5000円から一万円くらいのヘ
ッドフォンで、夜静かなときに mp3 の音楽を聴いてほしい。
ピアノの響き、ヴォーカルの声の伸びやかさ、テナー・サッ
クスの低音部、どれを聴いてもあーーー、となる。聴かない
方がましだ、と。

 mp4 だって問題だと思う。アップル・ファンのみなさん、
いかがですか。あなたのアップル製品(iTunes)に入っている
音楽は mp4 です。なので、大切な音域がこっそり削除され
ているんです。(しかしアップル・ファンはアップルが好き。
ライブ会場でせっかく購入したCDもせっせと音質の劣化し
た mp4 に変換して、iPhone に入れて嬉々として持ち歩いて
いる)

 人間の耳はすごい。どこまでも聴こえる。聴こえない音が
わかる。CD音質なら、すばらしい。しかし、CD音質より
も下ならば、ボクは聴くに耐えない。どうしても mp3, mp4 
を聴かなければならないときは、そーゆーモノとしてあきら
めて聴くことにしている。

 最近はHDが大きいのだから、みんなもっと flac を利用
したらいいと思う。くりかえすが flac はCD音質でファイ
ルサイズは1/2。しかも可逆性もあるので再びCDを焼く
ことも可能。そして無料。mp4 に固執する理由なんかないと
思う。

 iPhone/iPad 用にも FLAC Player、Golden Earという 
flac が再生できるアプリが出ている。

 音楽を、人生の中で、生きている中で、もっとも愛してい
るから、ボクは、mp4 の音は聴くことができない。

 反対に、世界中の若者や大人たちの耳をばかにして、高音
域、中音域、低音域、それぞれからうまーく音をぬきとって
商業的に成功を納めたアップル社(ソフト名:iTunes) は、
その部分において、やっぱり好きになれない。しかしMAC
 OSのつくりや考え方はいまでも好きだし、スティーブ・
ジョブスの名言ももちろん大好きだ。

 和歌山ではMAC OSX、WindowsXP の両方ともを使っ
ていた。どちらにも長所、短所があって、比較するのは興味
深かった。MACはとにかくウィルスに滅法強いのが良い。

 現在は、Windows7(英語版)を日本語化して使っている。
わずか、29,000円のノートPCだがあまりにも快適なので驚
いている。古い日本語のソフトもほとんどそのままインスト
ールできるのはありがたい。
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