<今日は18時に帰ろう>

last update 31.August.2004


 小降りだけど、たしかに降っているので傘をさして歩きはじめる。歩
きはじめて15秒後、ふいにまとまった雨がふり始める。雨粒が傘に当
たる音がだんだん大きくなっていく。最初は小さくパ・パ・パ・・くら
いだったのがたちまちパパパパパ・・と速くなり次いでダダダダダ!!
・・と音も強く大きくなっていく。その雨音を楽しむ。音を聞きながら
歩く。なんともきれいな音だ。今日は70cmの大きな傘を持っている。
この傘はあからさまなビニール製ではなく防水の布をはってある。色は
ベージュ。小さな傘に比べると、明らかに雨音が傘の中で大きくそして
低く反響するのが聞こえる。低音を伴っているためか心地よい雨音がす
る。その音を楽しみながら歩いていった。

 多分、ヒトはいろんなことで楽しめる。ハイキングに行けば季節のう
つろいを楽しめるし、小説を読めば想像の世界を飛びまわれるし、演劇
・芝居を見に行けば、人間のおもしろさ、おかしさ、悲しさ、つらさ、
そして生きる喜びをまのあたりにできる。こんなこと言うまでもない。
多くのヒトたちが様々な趣味を持ち楽しんでいる。

 ところが一方で、世の中のウラ側というか、陰の部分、暗い闇の中で
怪しく営まれている、しかし次第に大きくクローズアップされてきた「
遊び」というものもある。それは援助交際であり、覚醒剤をはじめとす
る麻薬である。

 援助交際というのは女子高生とおじさんの契約である。どちらか一方、
つまり女子高生がわるいのでもおじさんがわるいのでもない。おカネの
力でからだを買い、一方が売る、そういう対等な契約である。つまり詐
欺の一種ではない、きちんとした?売買契約である。

 なのに世間では「いまどきの女子高生は安易に・・」とか、もしくは
「ったく、おじさん側も何を考えてんのか」とか、批判する。そんなも
ん批判したって始まらない。経済学でいう需要と供給のバランスが成り
立つように、援助交際の実績数?総売上高?(どちらも統計が取れない
と思うけど、)は増減、いや、どちらかと言えば年々増加していくのだ
ろうから。

 相場は三万円だそうだ。この金額にしたってやれ高いだ、やれ安いだ、
外野がガヤガヤ言っても始まらない。ここでも経済学の自然な原理によ
って相場が決まり、また変動していくだけなのだから。

 援助交際などけしからん!こういう声をよく聞く。ごもっとも。では
聞くが、あなたは女子高生とおじさんがわるいとお思いですか。つまり、
そういったコトを平気でする女子高生と、そういった女子高生をカネで
買うおじさんが、両者一人もいなくなれば「援助交際」などというケダ
モノじみた行為がなくなり、すっきり暮らしやすい世の中になるとお思
いですか。

 はっきりいって甘い。援助交際がますます増加しています、みたいな
ニュースをテレビで見るたびに「けしからん」とか「近頃の女子高生は
まったく・・」とか口にしているあなた、甘いです。自分は一流企業の
会社員で、きちんと奥様がいて、子供も二人いる、もちろん不倫もして
いない、ごくまっとうな人間だ。テレビの向こう側にいるバカそうな女
子高生はまったく自分とは関係がないイキモノだ、くらいにしか思って
いないのでしょう。

 それを「思考停止状態」と言います。会社の仕事で忙しいんだか、な
んだか知らないけど、もう少し世の中のことを考えないと、わるい方、
わるい方へ行ってしまうこの方向性を変えられないよ。

 まず、あなたは神様ではなく、単にこの「世の中」で生きている一人
の人間である、ということ。そしてここが重要なのだけど、あなたがこ
ういう現在の世の中をつくったということを認識しているかどうか。(
責任の一端はあなたにあるということ)つまり、こういう「環境」の中
に生かされていると同時に、こういう環境をつくった(つくっている)
人間の一人であるということを認識しているかどうか、です。

 ヒトはおカネというものを発明しました。これはすごい力を持ってい
る。なんでも買える!女子高生がそれを欲しがるのも無理はないでしょ
う。(あなただっておカネが大好きなはず)バイトなんかしているより、
三万円単位で稼いでいる方が楽だ、そう考える女子高生が増えることに
不思議はないでしょう。

 一方、おじさんたちの問題はなんでしょう?サラリーマンは会社の命
令を聞いて、言われたとおりしているのがつらくとも一番楽なんですね。
なにか失敗して減給なんてされたら奥様にも怒られちゃうし。そうそう
自分は会社の仕事だけをしていればいいんだ。これを3年、5年、8年、
15年と思い続け、働いているとどうなるか。あら不思議、思考停止の
仕事人間の出来上がりというわけ。だから、援助交際のニュースなんか
を見ても、自分は真面目である、あいつらは人間以下だ、くらいの感想
しか持てない。

*

 男性(親父)が地域社会や子育てに関わらなかった、もしくは関わっ
ていないから、こんな闇の経済が台頭する世の中になってしまったので
はないか。親父はここ数十年、なにをやってきたのか、と問えば「会社
の仕事です」という答しか返ってこないだろう。会社というのはお給料
をくれる代わりに、社員のすべての体力・知力・精神力さらに時間まで
を奪う組織と定義しても過言ではない。つまり男性は会社に通っていさ
えすれば誰からも文句が出なかった代わりに、子育てや地域社会への参
加の機会は奪われたままだった。

 経済原理の側面から会社企業を見たらどうなるのか。それは弱肉強食
の世界。より速く、強く、大きな組織に育て上げ、競合企業を叩き潰す。
そのために働いている社員が大部分ではないだろうか。成功したとして
名をとどろかせた企業には羨望の眼差しが向けられ、突き落とされた企
業はあっという間に人々の記憶から消えていく。

 勉強ばかりできる優秀な人材は、大企業にばかり集まり、なまじ頭だ
けはいいもんだから、その組織の利益・利権の確保には、絶大な威力を
発揮する。(外務省なんかその最たるもの。あの官僚たちは外務省の利
権しか考えていない)

 優良企業で働いてさえいれば給料は安定し、家もローンでなんとか買
えるし、奥様も欲しいバッグが買えるし、お子様も私立の学校に行かせ
ることができる。つい自分はエリートであり、あいつらは下等だから、
勝者になれなかったのだ、とも言いたくなるだろう。

 再度、思考の停止である。突き落とされ、倒産した会社のお父さんの
その後の人生はどうなったのか。奥様や子供さんたちの人生は?残念な
がらまったく知る由もない。しかし想像はできるはず。

 弱者をおもんぱかることを忘れた社会は必ずしっぺ返しをくらうはず
だ。闇の部分から目をそむけようとする人間はその顔を見ればすぐにわ
かる。思考が停止している表情をしているのがわかる、その一方的な言
動からもわかる。誰に対して怒り、憤慨しているか、でわかる。

 会社員の人たちへ。いますぐにでも実行できること。毎日、できる限
り残業しないこと。それからできる限り有給休暇を使うこと。余った時
間は子供と遊ぶ。地域社会へ参加する。この二つに振り当ててみてくだ
さい。そうそう子供を両親に預けて奥様と二人でゆっくり語り合う日が
一日くらいあってもいいよね。

*

 出会い系サイトで援助交際を申し込むおじさんが今日もいる。まず間
違いなく、奥様との仲はよくないだろうし、家庭崩壊しているのかもし
れない。こういうおじさんも問題だけど、こういうおじさんの存在を許
す自由な世の中・環境をつくったのは誰なのかを考えよう。

 なにも制限がないのが自由なのだろうか。ある制約があって、その中
の自由のはず。企業というもの、際限なく儲けてよい、なんてどこかお
かしい。際限なく儲けてもよいのなら、利益の一部(大部分でもよい)
を地域社会へ還元すべきだ。まず、社員に残業させることから削減し始
めてはいかがですか。>経営者もしくは代表取締役へ

*

 麻薬の問題は二つある。ひとつはうち始めると中毒になってしまうこ
とがあること。二つめは麻薬組織が儲かる仕組みが出来上がっているこ
と。

 「中毒」とは依存症ということ。やめられないということ。欲しいと
いうこと。いや、それがなければ、逆に危ない精神状態になってしまう
ということ。

 こうなってしまったら大変だ。手を出さない方がいいと言うしかない。

 一方、麻薬組織が儲かる仕組みが出来上がっていること、これも見逃
せない事実だ。しかし「カネを儲けるための組織である」という点にお
いて、いわゆる善良な一般企業と麻薬組織の間に差はない。麻薬組織側
も我が利益・利権を守るために、あらゆる知恵と労力を払って日々活動
している。

 にわとりと卵ではないけど、「麻薬が先かおカネが先か」を考えてみ
てほしい。これほど純度の高い麻薬を精製する技術は比較的近代のもの
だと想像できる。おカネの歴史はそれよりもはるかに古いだろう。

 ということは、麻薬とおカネが仲良く手をつないでいる現代の構図を
思い描くことができまいか。つまり歴史を振り返るまでもなく麻薬は大
金を効率よく稼ぐ、最も優れた商品なのだ。

 たしかに麻薬は問題だ。(中でも覚醒剤はこわいと思う)しかし麻薬
組織も日本の一企業も、またそこに属している社員も、「おカネ」とい
うものに大きな魅力を感じていることに違いはないのだ。

 ゼネコンでも商社でも、たった数人の社員が数億円のプロジェクトを
推進することは珍しくない。大企業だからこそ為せる技であろう。数人
で利益を数千万出すのだから、効率のよい仕事であると言える。うまく
遂行できればボーナスも上がるかもしれない。

 しかしだ。このように経済を少人数で大きく回す仕事が増えれば増え
るほど、ますます経済はちょっと想像もできないような大きな規模でし
か回らないようになるだろう。金融商品であるヘッジファンドやデリバ
ティブもしかり。

 その大きな経済規模の中でも十分おいしい思いをしたい(利益を出し
たい)組織のひとつが他ならぬ麻薬組織である。つまり麻薬組織が大き
く育っていくことと、会社で大きなプロジェクトを推進していくことは
まさにクルマの両輪のようなもので、マクロ経済的には密接に絡んでい
るわけである。表経済とウラ経済は、おカネを媒介にして手を結んでい
る構図が見えてくる。

 ここで言いたいことは、自分がしていること(仕事)が、どのくらい
世の中に波及し、また影響力をもっているのか、よく考えて自覚をもっ
て、また楽しんで仕事をしてほしいこと。もし仕事が別段楽しくないの
なら時間のムダだ。人生は長いようでいて短いのだから。

 援助交際にせよ麻薬の問題にせよ、世の中のあらゆる事象の中のひと
つの現象に過ぎない。末端の副産物のようなモノだ。どうして援助交際
や麻薬が流行るのか、もしこの問題を考えようと思うならば、まず自分
自身の生き方から問いなおしてみてはいかがだろう?

 すべてはメビウスの輪のようにウラも表もつながっている。様々な輪
が複雑に絡み合ってそれでもなんとか成り立っている、持ちこたえてい
るのがいまの世の中というものだろう。感謝の氣持ちを忘れてはいまい
か。生かされていることを忘れないように心の中に大切にしまっておき
たい。

        2004. 8. 31  ふじかわ おさむ  at 南荻窪



Top Page




inserted by FC2 system